第11章 緊急事態
開けた扉の先には浅葱先生の言ったとおり『黒いバン』が停まっていた。
スモークが掛けられた窓が少し開いて、男の子の顔が覗いた。
「乗って!」
男の子が開けてくれたスライドドアに身体をねじ入れてシートに倒れ込む。
「おつかれさん!」
「あなたは…………賢人さん?」
「えぇっ!!なんで分かったの??」
長めの黒髪を搔き上げながら賢人さんは白い八重歯を見せた。
あまりにもショータの言ってたとおりの男の子だったからすぐに分かった。
「果音!?」
後ろから聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。
3列めのシートに居たのは―――――
「なぎさ!!」
「果音〜〜〜会いたかったあ〜〜〜」
私と同じ看護師の格好をしたなぎさの目には涙が溜まっていた。
「とにかく出るぞ!!」
バンは既にエンジンがかけられていて、急発進した。
病院の門に差し掛かった時、警備員が一人飛び出してきて『通せんぼ』した。
(……………っ!)
私となぎさは息を嚥んだ。
「大丈夫、心配ないよ。」
賢人は八重歯を見せて笑った。
バンが停まった。
すると門の側の警備ブースからもう一人警備員が出てきて通せんぼした警備員に敬礼をした。
そしてごく自然にドアを開け、私の隣に乗ってきた。
「ご苦労!」
賢人が敬礼したその警備員は――――――