第11章 緊急事態
お医者さんは『浅葱(あさぎ)』と名乗った。
毛布にくるまれて浅葱先生の車の後部座席に寝かされた私は病院へと運ばれた。
助手席にはしっかりと見張りの係員が乗ってきた………
病院の入口では看護師さんたちが待機していた。
手慣れた手つきでストレッチャーに載せられて個室の病室に入れられた。
「あなたはここまでです!」
浅葱先生は見張りに付いてきた係員にピシャリと言った。
「……で、でも………」
「重病の可能性があるんですよ?!病室には入れられません!」
係員の鼻先で戸が閉められカギが掛けられた。
「………宮本さん?よね、どう?具合は?」
防護服を抜いだ浅葱先生は若く優しい感じの女性だった。
「あ……少し、良くなりました。」
「それは良かった。今夜はここでゆっくり休んで検査は明日にしましょう。
眠れなそうなら薬を出すけどどうする?」
私は首を横に振った。
「そう……じゃあ何かあったらナースコールを押して。大丈夫!安心して!絶対にあの人たちは入れないから!」
浅葱先生はドアの方に目線を送った。
「じゃあ、おやすみ。」
浅葱先生と看護師さんたちは病室を出て行った。部屋の前に陣取っている係員と何か言い合っている声がしたがやがて静かになった。
ひさしぶりの柔らかいベッドで病衣だけど何かを着て眠ることでやっと人心地がした。
私はトロトロと微睡みながら今日の昼間の出来事を思い起こしていた。