第10章 スワップ
次の日から繁殖期だった。
(やだなあ………ふくらはぎには鉄のプーツを履かされた跡や腕にはベルトの跡………何と言っても胸をいたぶられた跡が酷い。
ショータに何て言おう…………)
怠いカラダを引き摺るように歩いていると、白田先生に首の鎖をグイと引っ張られた。
「そっちじゃないよ!淫乱娘!」
(え、だってショータの房はこの奥じゃ………)
「今月からはこっちの房だ。」
私は別棟の『M5』と書かれた房に押し込められた。
「相手変えてやったんだから今度こそ孕みなさいよ!」
ガチャリと錠をかける冷たい音が響いた。
薄暗い房の中、寝台の上に人影があった。
「どーも………」
膝を抱えて座っていた人物は口を開いた。
「出席番号5番、等々力猛龍。皆『トッド』って呼ぶ。ま、よろしく。」
明るい色をしたくせっ毛で大きな瞳が印象的だった。『トッド』ってあだ名がぴったりだ。
(………え?そうすると出席番号5番の女子がショータの房に?!
5番て…………なぎさじゃん!!)
私はなんとも複雑な気持ちになった。
「ねえ!………ねえってば!」
「あっ………はいっ!」
「そっちの名前も教えてよ。」
考え込んでしまってトッドが話し掛けているのに気がつかないでいた。
「わ、私はっ、出席番号15番っ、宮本果音ですっ!」
「……出席番号15番てことはショータのお相手だったコだね。」
「ショ、ショータを知ってるの!?」
「知ってる知ってる、友達だよ。いいヤツだよな?」
「うん、すっごく!」
と即答してしまって恥ずかしくなってうつむいた私の目に解いて寝台にぶら下がっているトッドの脚が目に入った。
くっきりと私と同じ様にブーツで締め付けられた跡があった。
(あ…………)
トッドも私のカラダ中に付いている拘束の跡に気がついたらしい。一瞬大きな瞳が揺れたがすぐに目を逸した。
(………優しい人なんだな。)
「最初に言っとくけど。」
急に大きな声で言われて私はハッと顔を上げた。
「オレ、ゲイだから。」