第8章 パンダ
コンクリに囲まれた牢獄の様なこの建物だけど、耳をすますと雨の音が聞こえてくる。
(………梅雨入りしたのかな?)
私たちは3回目の繁殖期に入った。
今回私と一緒に大型のモニターが運びこまれた。
「……何だろ?コレ。」
「テレビ見せてくれんのかな。」
いぶかしげに二人で黒い画面を眺めていたら――――
ブツッ――――
急に画面が明るくなり、そこに映されたのは!?
裸の男女がまぐわっている映像だった!
「な、何これっ!」
「うっわあ………アダルト?」
「意味わかんない!」
「あ、俺分かった、パンダだ。」
「パンダ?」
「パンダって繁殖させにくいんだってさ。
だから動物園でなかなか後尾しないパンダのカップルに、他のパンダの「行為」の映像見せてソノ気にさせるって聞いたことがある!」
「えぇ?!じゃあ私たちパンダ?」
ショータはぷっと吹き出した。
「そう言えば果音、パンダっぽいな。」
「わ、ヒドい!」
「可愛いって意味で言ったのにな。」
「えっ!?」
私は見る見る顔が赤くなっていくのをごまかす為にショータを小突いて、寝台に転がした。
「いてっ!」
「うそでしょっ!タレ目で丸顔だからでしょ!」
「ちーがーうっ!」
今度は私が寝台に転がされた。
「きゃ!」
「ぷぷっ、その転がり方パンダっぽかった!」
「もうっ!パンダから離れようよっ(笑)」
私たちは「アダルト映像」のいかがわしい音声が響く中、ゲラゲラ笑いながら寝台を転がり回っていた。
「あぁ可笑しい、こんなに笑ったのひさしぶり!」
…………ガバッ!
一緒に笑い転げていたショータが急に掛け布を頭から被せてきた。
暗がりの中でもショータの顔がすぐ近くにあるのが分かった。
「果音………」