第6章 第二学年一学期
シオリの通っている学校は幼稚園から大学まである一貫校で、よりすぐりのお嬢様しか入れない名門校だった。
校則は厳しく、男女交際どころか親の決めたお相手の男性以外とは口を利いたり一緒に歩くことも禁じられていた。
破った者は速攻退学だ。
シオリは泣いて電話してきた。
「どうしよう……シオリが退学になったらお父様もお母様も………親戚もみんなダメになっちゃう!」
シオリの父は大企業の重役なんだが、学校の設備など一括でその会社が担っていて、シオリが退学しかも『不純異性交友』でとなったら(不純なことは一切していないつもりだが………)今後の取引に大きく響く。シオリの父や親戚もその会社で働いているからどうなってしまうのか!?
さらにはシオリの母は学校のPTAである「母の会」の会長だ。
小さな肩にこんな重圧がかかっていたとは………
俺はシオリの為に一芝居打つことにした。
―――――俺は警察に捕まった。
シオリへのつきまとい、ストーカー容疑だ。
最近シオリが足や腕に擦り傷を負って帰宅していたのはストーカーである俺から逃れて転んだりした為ということに……(本当はチャリの練習中に自分で付けた傷なんだがな。)
未成年だから刑務所に行くことはなかったが、結構な大きなニュースになってしまって俺は定時制高校を退学に、バイトもクビになった。
家族も住んでた家に居られなくなって遠くに引っ越すことに。
俺はついてくるなと言われた、
シオリとはあれからは一度も会えていないが、何通かメールのやりとりはした。
俺は誓った。
何とかして高校、そして大学も出てきちんとした仕事に就いたらシオリの夢を叶えてやると!
ピカピカの揃いのチャリで一緒に旅をするんだ―――――
シオリからの返信には「いつまでも待ってる」とあった。
だけど『前科者』の俺を入れてくれる学校などなく――――――詰んでた時にこの高校の存在を知ったんだ。
こんな俺でも入れたし、学費など一切タダだし!
夢に一歩近づけたと思ったよ!
ところが二年時からこの扱い………
世の中はそうそう甘くないんだな。