第6章 第二学年一学期
(………ひゃっ!)
私は部屋の隅に膝を抱えてうずくまった。
恐る恐る顔を上げると、影の主も反対側の隅で膝を抱えていて、こちらを見るでもなく虚ろな目をしていた。
―――――何時間経っただろう。
このまま「繁殖期間」をやり過ごしたいと思ったが、そうはいかなかった。
(……………トイレしたい!)
この部屋にも排泄用のトレイはある。だけど男子?の前で出来るワケない。
さらに数時間?が経った様だ。
(………………はあっ!限界が近いっ……)
脂汗が出て来た。誰が見ても分かるほど赤い顔をしているに違いない。下腹部がズキズキ痛み始めた。
(‥‥‥‥もう……無理………)
脚の間を生温かいものが伝った。
(あぁ、私はもうおしまいだ………)
気がだんだん遠くなっていく……………
グイッ!
その時、腕を掴まれてカラダが浮いた。
トンッと軽く突き飛ばされて私は反対側の壁に倒れこんだ。
『ビ―――――――ッ!』
排泄した時のボタンが押された音だ。
(や、やだぁ…………)
バタバタと係員がやって来た。
「M15!おまえチビったのか!?」
M15と呼ばれる私の相手?(ちなみに私はF15だ。ここでは名前じゃなくて囚人みたく番号で呼ばれている。)は何と私の粗相してしまった上に立っていた。両足がすっかり濡れてしまっている。
「初めて『雌』が来たからって興奮し過ぎだろ!」
やって来た二人の係員は下品に笑った。
M15はそれでも表情を一つも変えなかった。
(!?そうかこの部屋は男子の部屋たから男の係員もいるのか……ヤだなあ………)
「仕事を増やすなよ!」
悪態をつかれながら始末がされて係員は出て行った。
足もキレイに消毒されたM15はつかつかとへたりこんでいる私に近づいてきた。
暗くて表情は見えないがたぶん怒ってる!
「………あ、あのっ、ごめんなさいっ!」
やっとの思いで私は言った。
「謝らなきゃならないのは俺だ。」
「へ?!」
「ごめん、突き飛ばして。痛かったろ?」
手が差し伸べられた。
「立てるか?どこか痛いとこないか?」
「………っ!大丈夫ですっ!」
私はスクっと立ち上がった。
「良かった。
あのさ…………アレだけど。」
M15は排泄用のトレイを顎で指した。