第6章 第二学年一学期
数日経って、食餌でも入浴でもない時間に防護服の「係員」が入ってきた。
「F15!宮本さん、私よ白田。」
「し、白田先生?」
「あらあ?酷い顔ね、随分泣いたんでしょ?
今日から繁殖期間に入るってのにねえ。」
(………!繁殖?!)
「だけど………」
白田先生は私のカラダを舐め回す様に見た。
「だいふ肥えてきたわね、宮本さんは繁殖させるには痩せすぎで心配していたけど、いい事だわ。」
確かに………ロクに運動もさせられず、ただ大量の食餌を食べされられているばかりだったから数日でカラダは重たくなってた。
「さ、行くわよ。子豚ちゃん。」
白田先生は壁の鎖を外した。
「………し、白田先生!!」
白田先生はグッと私の首輪に付いた鎖を引くとモノサシを振り上げだ。
「先生!ぶたないで!………これだけ教えて!
私たちはどうしても一生ここから出れないの?!」
「あははははは!!」
白田先生は楽しそうに笑った。
「オリエンテーションで言ったじゃない?そんなことも理解出来ないほどアタマ良くないなら、この境遇は悪くないんじゃない?
普通に社会に放り出されてもおそらくまともな仕事になんて就けないでしょうから。
ここなら一生暮らしの心配無用なんだからさ。
あ?宮本さんはこんなことならあの時迎えに来たご両親の言う通り退学して引きこもりのお姉さんの世話を一生させられてた方が良かったとでも思ってる?」
私は何も言い返せなかった。
――――――鎖を引かれて連れて来られたのは【M15】と書かれた檻の中。
「さあ、男女交際解禁よ!二人共鎖は外してあげるから、お好きにどーぞ!」
外した鎖をジャラジャラさせて、白田先生たち係員は戸をしっかりと施錠して去って行った。
私の居た部屋より少しだけ広い。寝台も広い……
―――――誰も居ないかと思ったほど鎮まり返っていた空間の中、ぼんやりとした影がゆらりと動いた。