第16章 プリンセス
「楽しかったよ♪クルーザー貸切りでパーティしてもらったの!」
「あらあ、いいわね。」
「でもねシオリ、プレゼントはお花じゃなくてバッグが良かったって言ったら、来週買いに連れていってくれるって!
S金のフレンチも予約するからママも良かったらどうぞって。」
「まあ、素敵!だけどお邪魔じゃない?」
「えへへ、たまにならいいよお〜
あ、ママもバッグ買ってもらったら?」
「そうね、おねだりしちゃおうかしら?!
何てったって慎也さんはお父様お墨付きの『御曹司』だものねえ。」
――――一陣の風が吹いた。さっきショータが置いたピンクの薔薇が宙に舞って束ねられていた赤いリボンもほどけて――――薔薇はひらひらと数枚の花びらを散らしながらシオリさんとお母さんの間に落ちた。
「あら、お花。」
「さっき慎也さんからもらった花束から落ちたんだね。たーくさんだったから。後でお手伝いさんに片付けてもらうね。」
「風が出てきたわね、シオリちゃん、お家にはいりましょ。」
楽しげな二人はお屋敷の中に吸い込まれていった。
後に残ったのは地に落ちたピンクの薔薇――――
「行こう。」
「……!」
ショータは私の手を取って踵を返し、駅の方へ小走りに歩き出した。