第16章 プリンセス
―――――駅前の花屋さんにやって来た私たち。
「ひぇ〜花って高いんだなあ!」
「そうだよ、特にバラはね…………
あ、これカワイイ!これがいいんじゃない?」
小振りな淡いピンクのバラ………
「名前は『プリンセス』だって!シオリさんにピッタリじゃない!」
「ありがとうございましたあ―――」
「………あっ」
店を出る時ショータがふと立ち止まって振り返った。
「どうしたの?ショータ。」
「ん?何でもねえ、それより……少ししか買えなかった…………」
「大丈夫、大丈夫!気持ちがこもってれば量なんて関係ないって!
じゃっ、がんばってねえ〜〜」
帰ろうとした私の腕をショータがぐっと掴んだ。
また、心臓が跳ね上がる。
「な、なに?ショータ?」
「コ、コレ持って電車乗るの恥ずかしいっ、お願い!一緒に来て!電車代出すから〜〜」
「も〜〜〜しょうがないなあ!」
(と、言いつつもショータの大好きなシオリさん、ちょっと見てみたいから行っちゃお!)
バラを持たされた私は電車の座席にショータと並んで座る。
(お花持ってると目立つんだなあ、皆見てる様な気がする。私がショータからもらったみたいじゃん。)
だいぶ緊張しているショータの横顔を盗み見る。
「あれがシオリさんの家?」
「そうだよ、日曜でも昼間は両親いないはずだからたぶん渡せる!」
なぎさの豪邸にはかなわないが小高い坂の上の白亜の邸宅。まさに『プリンセス』が住んでいそうな。
「うわあ〜〜緊張するなあっ!」
「何言ってんの、ここまで来て!ほらっ、行っといで!」
私はぎこちなくバラを持ったショータの背中をバンと叩いた。
その時―――――――