第2章 留守番後の衝撃
工藤邸の広い家の中。
明かりが灯る家に響くのは、私の手元にある本のページをめくる音だけだった。
「………」
読み始めて何時間経ったのだろうか。
気になり本から視線を上げた私は、ルームウェアのポケットに入れておいたスマホへと手を伸ばす。
「…あれ?」
だが、そこにスマホはなかった。
大方リビングにでも置き忘れたのだろう。
書斎には見やすい位置に窓がない為、明るさから時間を予想する事もできない。
「はぁ…」
1度気になってしまえば時間を確認しないで続きを読む気にはなれないというものだ。
私は仕方なく立ち上がり、机の上に本を置いたまま書斎を後にした。
机の上に取り残されたのはミステリーで埋め尽くされた書斎に似つかわしくない 警察官になるためには というタイトルの本だった。
*✿✿✿✿✿*
リビングに行くとお目当てのスマホはあっさり見つかった。
「ん?」
通知を知らせるランプが点滅している私のスマホ。
確認すると蘭姉ちゃんから着信が入っていた。
蘭姉ちゃんとはお兄ちゃんの幼なじみの女の子で、昔からお兄ちゃんに着いて回る私の面倒を見てくれていたお姉ちゃん的存在だ。
今日は空手の都大会で優勝したからトロピカルランドに連れて行ってやるとお兄ちゃんが言っていたのだが、なぜか3件も不在着信が残っている。
「…………」
2人に何かあったのかもしれない。
嫌な想像をして、すぐに折り返す。
蘭
「あ、音羽?何回も電話してごめんね?」
「ううん、全然大丈夫!それよりどうしたの?」
電話先の蘭姉ちゃんはいつも通り優しいが、どこか落ち着きがない。