第2章 留守番後の衝撃
阿笠博士
「優作くんかー。すぐ気づいてくれるといいんじゃが……」
「ね。最悪の時はお母さんにしてみる」
こんな言い方をしているが、私が普段電話しているのはお母さんの方だ。
今回はかなり大事な話な為、忙しくてあまりかけないようにしているお父さんに電話したのだった。
「とりあえず待つしかないか」
少しでも早く気づいてくれと願いながら、スマホをテーブルに置く。
その時だった。
阿笠博士
「お!」
「きた!」
置いたばかりのスマホが着信を知らせる。
優作
「もしもし、音羽?」
電話をとると聞こえてきたのは、耳馴染みのいい優しくて落ち着けるお父さんの声。
その声を聞いていると、先程までの不安や心配がスっと薄れていくようだった。
「お父さん、ひさしぶり!」
優作
「ひさしぶり。様子は有希子から聞いていたが、元気そうで良かったよ」
「お父さんも元気?仕事の調子はどう?」
優作
「元気だよ。仕事については…まあまあだとでも言っておこう」
この言い方から察するにあまり順調ではないのだろう。
いつも通り溜め込んで、たくさんの出版社を困らせている様子が容易に想像できてしまう。
優作
「そんな事より何か急用だったんじゃないかな?今頃そっちは夜だろう?」
「あ、うん。ちょっと問題がおきてて…」
優作
「問題?」
さすが察しのいいお父さん。
促されて切り出せば、声のトーンも真剣なものへと変わっていく。
「博士、お父さんには全部言ってもいいよね?」
一応3人だけの秘密だと言っていた博士に確認を取ると、博士は静かに頷いていた。
そんな博士に私も頷き返し、電話へと意識を戻す。
「実はお兄ちゃんが…」
そして今日あった事をできるだけ詳しく、私がわかる範囲で説明を始めたのだった。