第2章 ご主人様と猫。ご主人様のお話。
仕事で訪れたオークション会場だった。盗品も含まれる絵画や美術品から、個人情報、裏帳簿や各社の極秘データ、行き場のない人間、臓器の売買。表には決して出ない、様々な物が競りにかけられる。
やや暗めの照明は、舞台上の商品を明るく引き立てる為。
辺りを見渡せば、金を持っていそうなジジィか下品なマダム、もしくは仕事で来ているバイヤーや、自分のような社会から外れたスーツ姿の人間かのどちらかだ。それぞれが皆、欲と金の為にこの場に居た。
面倒臭ェ、と小さく吐き出して煙草を咥える。
オークション会場には初めて来た訳ではない。数えて数回だが、全て仕事で訪れている。今日は以前潰した組織の裏帳簿が出品されるとの情報が入り、同業者に見られたら不味いモンが混じってると言われて仕方なく足を運んだ。
オークション中、声を上げて商品を購入したのは三途の部下だった。自分は後ろで指示を出す。
それだけの仕事。
ーーンな子どものおつかいなんて、もっと下っ端でも出来ンだろ。