• テキストサイズ

乙女ゲームの一生徒に転生した私は穏やかに暮らしたい

第4章 仮入部期間は張り切るべき時


部長はコホンと一つ咳払いをして、眼鏡の位置を直した。

「この人数を見て分かると思うが……放送部は、廃部の危機に陥っている。それというのも理由があるのだが……今は、その話をするのはよしておこうか」

理由、と言うと、部員の人数が減った件についてだろうか。
その話題を出した時、部長の顔が少し歪んだ。私はそれに気づかないふりをして、部長の言葉の続きを待った。

「だが、僕は、僕たちは、ここで放送部を終わらせる気はない。もしも君達が本入部をするつもりならば……部員を集めるのを手伝ってほしい」

部長は頭を下げた。手が、微かに震えている。

「本当は新入生である君達に頼むような事ではない。それは、分かっているんだ……」

その声は悲痛で、私の胸が軋んだ。

本来は来年でも人数さえ集まれば廃部にはならないのだが、ここで学校が『潰しにかかっている』とも取れる対応をするのは、野球部などに力を注ぎたいなんて理由があるのかもしれない。


部長にとっても、他の部員の人達にとっても、ここは大切な場所で、学校の放送を担っている部活だ。廃部になんて、したくないだろう。

私も、放送部をなくしたくなんてない。

だから。

「私、手伝います」

しんと静まり返った部室の中で、私の声はよく通った。
/ 29ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp