乙女ゲームの一生徒に転生した私は穏やかに暮らしたい
第4章 仮入部期間は張り切るべき時
部長はコホンと一つ咳払いをして、眼鏡の位置を直した。
「この人数を見て分かると思うが……放送部は、廃部の危機に陥っている。それというのも理由があるのだが……今は、その話をするのはよしておこうか」
理由、と言うと、部員の人数が減った件についてだろうか。
その話題を出した時、部長の顔が少し歪んだ。私はそれに気づかないふりをして、部長の言葉の続きを待った。
「だが、僕は、僕たちは、ここで放送部を終わらせる気はない。もしも君達が本入部をするつもりならば……部員を集めるのを手伝ってほしい」
部長は頭を下げた。手が、微かに震えている。
「本当は新入生である君達に頼むような事ではない。それは、分かっているんだ……」
その声は悲痛で、私の胸が軋んだ。
本来は来年でも人数さえ集まれば廃部にはならないのだが、ここで学校が『潰しにかかっている』とも取れる対応をするのは、野球部などに力を注ぎたいなんて理由があるのかもしれない。
部長にとっても、他の部員の人達にとっても、ここは大切な場所で、学校の放送を担っている部活だ。廃部になんて、したくないだろう。
私も、放送部をなくしたくなんてない。
だから。
「私、手伝います」
しんと静まり返った部室の中で、私の声はよく通った。