乙女ゲームの一生徒に転生した私は穏やかに暮らしたい
第1章 この現実を受け入れよ
それは、突然の事だった。
強く頭を打っただとか、心を揺さぶられる出来事があった訳ではない。
本当に、突然。唐突に思い出した。
ここが、前世でよく遊んでいた乙女ゲームの世界だと言う事を──。
……マジで? これが、記憶を得た私が一番初めに思った事だった。
アニメや小説で『転生』を題材にした作品に触れた事はあるが、まさかそれが私の身に降りかかるなんて、誰が想像出来るだろうか。
実際に誰かが体験したからこそ転生作品があるんだよねぇあはは、なんて現実逃避をしてしまうが、何とか思考を元に戻す。
第二の人生で得た人格と、前世の人格の二つが共存しあい溶け合うこの感覚は、中々に不思議なものだ。
あまりにも衝撃的過ぎて、今さっきまで見ていたテレビの内容が頭に入ってこない。
「嘘でしょ……?」
私の呟きは誰にも聞かれる事はなく、静かなリビングに響いた。