乙女ゲームの一生徒に転生した私は穏やかに暮らしたい
第3章 きっかけは教科書
「では私はこれで……!」
休み時間もそう長くはない。
そろそろ自身の教室に戻ろうと一歩を踏み出した時、
「あ、ちょっと待って」
敬人さんに引き止められた。
徐に敬人さんは手を翳す。その手は私の目前に迫り──。
頭の側面、横髪の辺りを触られた。
整えるように数回私の髪を撫で、
「髪、跳ねてたよ。走ったりした?」
ふわりと微笑む敬人さん。
……え、今、何された……?
まるで少女漫画か何かで出てくるような事をされた、気がする。
これがゲームのスチルなら、きっと私は横顔か後ろ姿が描かれてるんだろうな……。多分アングルは斜めからのものだろう。
ポカンとしたあと、今された事と、これが現実なのだという事を理解した私は、
「もう休み時間終わりそうなので! 私は! これで!」
赤くなった顔を隠すように、逃げるようにその場から離れた。