【現在HUNTER×2イルミリク執筆中】短編集【R18】
第5章 【ヒロアカ 】【自作】毒の花※死柄木【R18】
「俺が怖いのか?」
弔が私にそう聞くと、答える代わりに目線を弔から逸らした。
その私の行動を見て、弔は目を細める。
怖くは無かった。
ただ、あのまま幻影のままの弔を思っていたかった。
こんなにも住む世界が違う弔と、もう何を話していいか分からない。
2度とあの時弔を想った様な感情は、持つことは無いと分かったのが、とても悲しいだけだ。
「‥仁美ちゃんを助けるのがヒーローなら壊れなかっただろうな。」
弔がポツリと言った言葉に、再び視線を合わせる。
ああ、この人は助けに来てくれたんだ。
弔なりのやり方で。
あの光景を、嬉しいと思える人でなければ、この人達と一緒に居れないのだろう。
私は重たい腕を上げて、弔の顔に触れた。
「‥弔さんが好きな様にしていい、だけどその後は私は弔さんを忘れる。」
弔が私をどうしたいか、分からない。
もし、最後に彼が私に手をかけないなら、私は花を咲かそう。
記憶を消せる花を。
それが嫌なら、私を殺したって構わない。
私は弔の共犯になる事はない。
死ぬか、忘れるかだ。
私の意図が分かると、弔は私の顔を掴んで、耳元に顔を近づける。
「ならその時は、俺の記憶も消しておけ。」
弔のその言葉に、胸がギュッとなった。
弔は顔を上げると、私の目を見て、そのまま私にキスをする。
これが彼を受け入れる最後だ。
弔の舌が口の中に入ってくると、私は受け入れる様に自分の舌を絡める。
ああ、初めてのキスが弔だから、こんな気持ちになるのだろうか。
静かな部屋に、お互いの吐息と、舌の絡み合う音が響く。
このキスが気持ちがいいのは、初めてだからで、きっと好きな人とキスをしても同じ気持ちになるはずだ。
そう頭では想っているのに、弔にしがみつきながら、キスを繰り返していると、涙が出る。