【現在HUNTER×2イルミリク執筆中】短編集【R18】
第5章 【ヒロアカ 】【自作】毒の花※死柄木【R18】
弔が屈んで私の頬を撫でた。
弔の手の感触を感じて、私は初めて涙が出た。
その手はあの日と同じ優しかったからだ。
「俺が助けに来たと思うか?」
ニッと笑って弔は私に言った。
私は小さく首を振った。
私に触れて、笑っている弔の顔は、どう見てもヒーローの様に、人を安心させる様な笑みでは無かった。
どちらかと言えば、答えによっては、さらなる苦痛を味わいそうな、弱者を試す様な蝕む顔だ。
私の答えに、弔は満足そうに笑った。
「俺の共犯だ。今から起こることは全て、俺と仁美ちゃんがやる事だ。」
弔はそう言うと、1人で部屋の外に出ると、そのまま歩き出した。
弔の姿が見えなくなって、しばらくしてから遠くから人の叫び声と、銃声が聞こえた。
私は重たい上半身を、腕だけの力で起き上がらせる。
今の私にはこれが精一杯だった。
弔が出て行ったドアを見ながら、私はさらに体に力を入れて立ち上がろうとする。
どれだけ立っていなかったのだろう、下半身に力は全く入らなかった。
それでも私は這いつくばって、ドアの外へ向かう。
階段を這って上がると、騒音は更に大きくなり、私はその光景に目を見開いた。
弔が触れた人達が、跡形もなくチリになっていく。
非日常的なその光景が、殺人行為と言う事を理解するまで、しばらく時間がかかった。
目の前で次々に人を殺していく弔の顔は、何の感情も感じられない。
私は思わず顔を伏せて、目を瞑った。
それでも、聞こえてくる叫び声は勝手に耳に入ってくる。
こんなの、まともな人間が耐えられる光景じゃ無い。
込み上げてくる胃液が、口の中に広かった。
たまらず私はその胃液を床に吐き出す。
何度も喉がなり、口から出る胃液も、目から出る涙も、まるで自分が出しているのか分からず、床に落ちる体液をただ見ていた。