【現在HUNTER×2イルミリク執筆中】短編集【R18】
第4章 【ヒロアカ 】【自作】宝贝儿※荼毘【R18】
この人の目に自分が映ると、やはり体が硬直する。
「‥あの人に会いました。」
彼女の名前を知らない私は、やはり抽象的な呼び方しか出来ない。
それでも荼毘と同様に、死柄木は誰の話をしているか分かっていた様で、私がそう言うと目を細めて私を見る。
死柄木は、私と彼女の接触を知っていた様だった。
「‥ああ、次会ったら、『せいぜい頑張れ』って言っておけ。」
そう言って、死柄木は私に背を向けて歩き出した。
ーそれだけ?
あまりにも呆気ない死柄木の対応に、私は呆気に取られる。
私は彼女からの言葉を伝えようとして、離れていく死柄木を、もう一度ど呼び戻そうと、口を開けた瞬間だった。
死柄木の足が止まり、彼の声が聞こえた。
「なぁ。」
彼はそう言うと、私に振り返った。
その死柄木の表情に、私は目が奪われた。
「あいつは笑ってたか?」
荼毘の声が重なった様に聞こえた。
ーああ、荼毘はあの時、こんな顔をしていたんだ。
そう言った死柄木を見て、私は胸が締め付けられた。
その顔は、離れている彼女を、それでも愛している男の人の顔があった。
同時に彼女の声も私の頭で響いた。
『弔は、笑って過ごしてる?』
最後に彼女が私に言った言葉だった。
あなた達は、同じ顔で、同じ思いで私にその言葉を向けたんだ。
「‥笑ってたよ、死柄木さんが貴女の話をすると、同じ顔して笑ってるって言ったら‥。」
笑ってると答えて、彼女は嬉しそうに笑い、今の死柄木と同じ様に、安心した後に、涙を堪えた様に切なそうに笑った。
とても雰囲気が似ている2人だと思った。
冷たく、青白い顔色の先に、最愛の人の名を聞き、その顔はその瞬間、一瞬だけ綻ぶんだ。
死柄木は私の答えを聞くと、俯いてまた私に背を向けると、その長い廊下を歩き始めた。