【現在HUNTER×2イルミリク執筆中】短編集【R18】
第4章 【ヒロアカ 】【自作】宝贝儿※荼毘【R18】
荼毘は空の月を見上げると、目を細めた。
「居なくなった女なんか想ってなんになる。」
「なぁ、楽しんだもん勝ちだよな『仁美』。」
荼毘は自分の握った拳を見ると、それをポケットに入れて歩き出した。
私の目の前に、荼毘より怖い死柄木が歩いてくる。
この人は多分私が荼毘に抱かれているのを知っている。
私と目が合うが、別に気にも止めないで私の横を通り過ぎる。
この人は知らない、私があの時九州の襲撃に参加していて、病院にいた事も。
あの時の光景は、今でも鮮明に思い出せる。
あの時、ホークスの腕からすり抜けた彼女が、死柄木にしがみ付くのを見て、彼女が誰を愛していたのかを知った。
その後荼毘がホークスよりも先に彼女を抱き上げたが、彼女の瞳は死柄木だけを見ていた。
この人達は随分と拗れた関係だったみたいだ。
彼女の何が、彼らをそんなに惹きつけていたのだろうか。
彼女が死柄木の隣で居る時は、明らかに表情も違っていた。
荼毘の時もお互いが好き合っていると思っていたが、2人がお互いを見る目は本当に大切な者を慈しむ目を向け合っていた。
誰が見たってお互いが最愛の人だと分かっていたのに、何故荼毘やホークスがその間に居たのだろう。
荼毘が何を思って彼女を愛したのか、知りたかった。
「死柄木さん。」
そう思ったら、思わず死柄木に声をかけてしまっていた。
死柄木はゆっくりと振り返って私を赤い目で捉える。
あまりの怖さに足がすくんだ。
「貴方はあの人の代わりに私を抱かないんですか?」
荼毘が聞いたら、きっと面白そうに笑う提案だろう。
教えて欲しい、貴方達があの人に何を見たのか。
「‥お前‥。」
死柄木がゆらっと揺れると、殺されると思って、体が固まった。
一気に冷汗が出て、すぐに言った事を後悔する。