第5章 陵南戦
は緊張で体をこわばらせている花道の前に、迷いなく歩み寄った。
気づいた花道が、どこか落ち着かない様子でそっぽを向く。
「天才なんだから、大丈夫。こんな短期間に、こんなスピードで上達する人なかなかいないよ。天才だからだね」
花「な、なんでい!き、緊張なんかしてないやい!」
即座に反論したものの、声はわずかに震えている。
その揺れに、は静かに微笑んだ。
「知ってるよ」
花「あっ…」
その一言に、花道の喉がかすかに鳴った。
“見透かされている”のに、不思議と嫌じゃない。
「天才桜木が緊張なんてしないこと知ってるよ。ただ応援の言葉を言いに来ただけ。頑張ってね、期待の新人、桜木花道」
花「お、おう!!!!」
その言葉に、花道の背筋がピンと伸びた。
“期待の新人”。
ただそれだけで、胸の中を埋めていた不安が一瞬で吹き飛んでいく。
仙(桜木のことを本当によく分かってるんだな)
流「チッ…」
流川の舌打ちが、かすかに響く。
だがその直後——。
ゴッ。
鈍い衝撃音がコートの空気を裂いた。
魚住の肘が赤木の目尻をかすめ、赤い飛沫が散る。
彩「ああっ!!」
「!?」
晴「お兄ちゃん!」
観客席もベンチも、一瞬にして騒然となる。
赤「ううっ…」
眉間にしわを寄せながら、赤木がその場に膝をついた。
「これは、まずい…」
(みんな頑張ってるとは言え、ゴリ先輩の代わりになる人はいない…)
反射より早く、はベンチ横の救急箱を掴んでいた。
彩子よりも先にコートへ走り込み、赤木の横に膝をつく。