第5章 陵南戦
陵南高校の体育館は、すでに緊張感で満ちていた。
スタメン発表も挨拶も終わり、湘北の面々はそれぞれ動き始めている。
その中で花道は、相も変わらず赤木や流川と騒がしく喧嘩しつつ、陵南のメンバーを挑発していた。
しかし——
今日の陵南にはあのエースの姿がない。
田「おい仙道はまだか!」
監督・田岡茂一の怒号が響き、体育館の空気が一瞬ピリッとした。
花「おい彦一、仙道はどこだ」
彦「それがまだ来てへんのですわ。時間におおらかな人やから」
魚住が腕を組みながら、ぼそりと訂正する。
魚「ルーズって言うんだ」
するとその時。
仙「ちわーす」
どこか飄々とした声とともに、仙道が体育館に入ってきた。
魚「来たか」
仙「わりぃ」
彦「ちわーす!来はりました。仙道さんですよ」
花「何!仙道!?フフッ。遅れてくるとは生意気な。俺に負けるとも知らねぇで」
田岡は堪忍袋の緒が切れたように怒鳴り散らした。
田「コラァ!このバカモン!今まで一体何をしとったんじゃ仙道!」
仙「すみません先生、寝坊です」
田岡の顔色が変わる。
田「ぐっ…」
仙道に遅刻されても、黙る以外にない。
それだけの実力が、彼にはあった。
そしてその空気が落ち着いた瞬間——
体育館の入口から、息を切らした影がもう一つ。