第5章 陵南戦
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父「いいか?。大人になると考えても分からないことが出てきたり、どうしようもなく落ち込んでもそれを周りに見せられない時が出てくるんだ」
「大人なのに??」
父「ああ。大人だからこそ、だね」
「変なの」
父「いずれ分かる時が来るよ。今はまだ分からないかもしれないが、もしにもそんな時が来たらこうするんだ」
「??」
父「とにかく走る!」
笑って言うと、父は突然砂浜を駆け出した。
「あー!お父さん待ってー!」
父「何度も何度も走るんだ。呼吸を整えて、筋肉の動きを感じながら。そうすればいずれ気持ちの整理がつく。いいかい?ちゃんと覚えておくんだよ」
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幼い足で必死に追いかけたあの日——
あの背中と声は、今でも鮮明だった。
風の音も、波の音も、
やがて全部遠のいていく。
はただ前を見て、
走って、走って、走り続けた。