第5章 陵南戦
そして、そのまま体育館で練習を続けていた桜木のもとへ、
陵南の相田彦一が飛び込んできた。
花道は「次期キャプテン」だの「天才」だの、
めちゃくちゃな刷り込みをしながらも、どこか嬉しそうだった。
一方その頃――。
は家に帰ってきてからも、
玄関を閉めた瞬間からずっと胸の奥が重く、冷たく沈んでいた。
部屋に入った途端、足が勝手にふらつくようにベッドへ向かい、
“落ちる”ように腰を下ろす。
「はぁ………はぁ………」
空気を震わせるようなため息が、一定の間隔で漏れる。
胸が痛むたび、喉がきゅっと詰まるたび、
またひとつ、ため息が押し出される。
「花道に51回も振られて、勝手に晴子ちゃんとくっつけようとして落ち込んで、みんなに迷惑かけて。本当に何やってんだろう私…考えれば考えるほど涙が出ちゃう…」
言葉にした途端、
じわり、と涙が滲んだ。
頬をつたう前にまばたきで押しとどめる。
けれど、胸の奥はざわざわしたまま沈む気配がない。
「はぁ………」
どれだけ吐き出しても、気持ちは軽くならなかった。
しかしそのとき――
ふと、胸の奥で何かが引っかかった。
「ん…?待てよ…?考えれば考えるほど落ち込む…そうよ!」
ぱちんと視界がひらけるように、
は突然ハッと顔を上げた。
「考えれば考えるほど落ち込むんだから考えなきゃいいのよ!頭の中を空っぽにするにはあれしかない!」
そう言うや否や、は部屋を飛び出した。
靴ひもを結ぶ暇も惜しむように玄関を駆け抜け、
もう黒に染まり始めた空の下へ走り出した。