第4章 基礎練習
「どういうつもり!?あんた、私が花道のこと好きなの知ってるでしょ!?花道と2人だけの空間でいられる久しぶりのチャンスだったのよ!?それなのになんで引き離すようなことするのよ!」
怒りで頬が赤く染まり、声は震えていた。
流「…あの朝からずっと気分落ちてんだろ」
「な…だったら何よ!」
流「俺は負けるのは嫌だ。」
「は…?」
流「迷惑なんだよ」
「なにがよ…」
震えていたのは怒りではなく、胸の奥に刺さった痛みのせいだった。
流川は短く息を吐き、言葉を続ける。
流「お前がずっとそんな調子だから、キャプテンや先輩たちが心配してんだ。気掛かりがあるような状態で、良い試合なんかできない。負けに繋がる。迷惑だ」
本当はもっと優しい言葉の続きがあった。
「だから早く帰って休め」と言いたかった。
でも、口にする前に——
「…ごめん…私…マネージャー失格じゃん…支えられない強くも出来ないんじゃマネージャー失格だよ…ごめん流川…ごめんみんな…ごめん花道…こんなんじゃ振り向いてもらえるわけない…」
ハッとすると、震える声で、泣きながら謝罪の言葉を重ねる。
その表情は、必死に顔を上げようとしているのに、目の奥は完全に折れていた。
「ごめんね、私…帰るね」
そう言い残し、踵を返して駆け出した。
流「お、おい!」
伸ばした手は空を掴むだけで、
の背中はすぐに夜の闇へ消えていった。
傷つけたくて言ったんじゃない。
流川はただ“戻ってきてほしかった”だけだ。
元気に笑うに。
けれど、返ってきたのは、涙と謝罪だった。
流「……っ」
流川は頭を抱え、苛立ちと後悔が入り混じった熱を噛み締める。
流(…どうすりゃいいんだよ)
その感情の名前を、彼はまだ知らなかった。