第4章 基礎練習
流「あんだろ」
静まり返った体育館に、その一言だけが落ちた。
「は…?」
顔を上げたに、流川はほんの僅かだけアゴをしゃくる。
流「あんだろ、勝てるとこ」
次の瞬間、流川の手からボールが一直線に飛んでくる。
は反射的に両手で受け止め、胸元でそっと抱え込んだ。
「…」
手に伝わる重み。
それはただのボールじゃなく、彼の“答え”そのもののようだった。
流「俺はあの女子のプレーは覚えてない。俺は上手いやつのプレーしか覚えてない。そしてお前のプレーは覚えてる」
その言葉に、の瞳が揺れる。
「あ…」
流「お前があのどあほうをバスケが出来るようにしてやれば、少しは可能性あるんじゃねーの」
不器用すぎる励まし。
だからこそ、胸に突き刺さる。
「なにそれ…流川のくせに…慰めてるつもり?」
思わず笑いが漏れる。
涙をひと拭いした瞬間、流川があっさりと言い放った。
流「別に。俺もお前のこと好きじゃないし。」
顔の前でひらひらと手を振る仕草までついてくる。
「やっぱあんた本当ムカつくわね」
そう言いつつ、口調はすっかりいつもの軽さを取り戻していた。