第5章 陵南戦
そして、そのまま体育館に残って練習をする桜木のもとに、陵南の相田彦一がやってきて、花道は次期キャプテンやら天才やら、おかしな刷り込みをしたのだった。
は家に帰ってからも落ち込んでいた。
「はぁ………はぁ………」
定期的にため息をついていた。
「花道に51回も振られて、勝手に晴子ちゃんとくっつけようとして落ち込んで、みんなに迷惑かけて。本当に何やってんだろう私…考えれば考えるほど涙が出ちゃう…」
はじわりとまた涙を目に溜めた。
「はぁ………。ん…?待てよ…?考えれば考えるほど落ち込む…そうよ!」
はハッとした。
「考えれば考えるほど落ち込むんだから考えなきゃいいのよ!頭の中を空っぽにするにはあれしかない!」
そしては家を飛び出した。
「はぁ…はぁ…」
ザブーン、ザブーン
が走ってやってきたのは海岸だった。
「よし…」
は砂浜で約50メートルを何度も往復して走った。
「はぁ…はぁ…」
(考えるな考えるな…ただひたすら走るのよ…どこの筋肉が動いているのかをちゃんと感じながら…呼吸を整えながら…)
これはがまだ幼く何もわからない時に、父が言っていたものだった。
父「いいか?。大人になると考えても分からないことが出てきたり、どうしようもなく落ち込んでもそれを周りに見せられない時が出てくるんだ」
「大人なのに??」
父「ああ。大人だからこそ、だね」
「変なの」
父「いずれ分かる時が来るよ。今はまだ分からないかもしれないが、もしにもそんな時が来たらこうするんだ」
「??」
父「とにかく走る!」
父はそう言って砂浜を駆け出した。
「あー!お父さん待ってー!」
父「何度も何度も走るんだ。呼吸を整えて、筋肉の動きを感じながら。そうすればいずれ気持ちの整理がつく。いいかい?ちゃんと覚えておくんだよ」
追いかけるに、父は走りながら言ったのだった。
やがての耳には波の音さえ入らなくなった。