第4章 基礎練習
その日の練習が終わり、着替えを済ませた部員たちは次々に体育館を後にした。
しかし——流川だけは一向に動く気配を見せない。
薄暗い体育館に残されたのは、流川と、片付け当番として残ったの二人きり。
「…」
流「…」
沈黙の中、流川の視線がじっとに向けられる。
その鋭さに、は“睨まれている”としか受け取れなかった。
「なによ。あんた残ってたら片付けらんないでしょ。さっさと着替えて帰んなさいよ」
流「俺と勝負しろ」
唐突で、理由の見えない言葉。
空気がピリッと張り詰め、は思わず振り向いた。
「はぁ!?あんた何言ってんの!?私素人よ!?」
流「お前さっき散々人の悪口言ってたろ。性格悪いだの、開口一番どあほうだの、大嫌いだの。大嫌いは俺もだから別になんとも思ってねーけどよ」
一言一句、全部聞いていたらしい。
「聞いてたの!?それの腹いせってわけ!?試合に集中しなさいよ!性格悪いのも、開口一番どあほうも間違ってないでしょーが!」
流川の黒い瞳が細められ、ほんのりと嘲るような色を帯びた。
流「どあほうにどあほうと言って何が悪い」
「またそんなことを…ムキー!」
怒りに目を光らせたを見ても、
流川の声色はまるで変わらない。
流「どあほうじゃねーか。自分の敵に軍配が上がるように仕向けるところとかよ。それでいてしょんぼりしてんだから」