第4章 基礎練習
「こっちもたくさんだわ…骨が折れる…ううん!花道と一緒にいるため!」
内容からして完全に“不良の存在が耳に入っていない”。
?「なんだ?こいつ」
困惑したように眉をひそめる不良に、はさらに質問を投げかける。
「あの、これ借りるんですか?」
?「は?」
「あなたもこれ借りるんですか?」
?「ふんっ。興味ねーよ。んなもん」
口では突っぱねてみせるが、その横顔はどこか影が落ちていた。
はそれを見逃さない。
「…本当ですか?」
?「なんだよ、文句でもあっか!?」
「…興味ないって言う顔、すごく悲しそうですよ」
図星を指されたのだろう。不良は一瞬言葉を詰まらせる。
?「なっ…そ、そんなこと…」
しかしはその反応すら気に留めず、淡々と告げる。
「ま、でもそう言うならこっちも好都合で良かったです!じゃあ私がこれ全部借りちゃいますね!」
そう言うや否や、棚に並んでいたビデオを全部抱え上げ、そのままスタスタと去っていった。
残された不良はぽつりと呟く。
?「なんなんだ…あいつ…」
ただの少女に振り回されたというのに、何故か否定しきれない複雑な顔で。