第3章 バスケ部入部
彩子や赤木、木暮が呆然とする中――
風を切るような疾走音とともに、が体育館へ舞い戻ってきた。
バンッ!!
勢いよく足を止め、息一つ乱さずぴしっと姿勢を正す。
「彩子さん!いろいろ教えてくれてありがとうございます!そして美人です!
ゴリ先輩!入部許してくれてありがとうございます!
メガネ先輩!優しい!
ではさようなら!」
礼を言い終わるのと同時に、体が弾けるように動き出す。
ビュオッ!!
再び風だけを残して、は瞬く間に体育館の外へ消えていった。
赤「な、なんだ…?」
完全に置いていかれた赤木が、ぽかんと呟く。
木「あれを言いに戻ってきたのか…?」
本気で驚きつつも、どこか笑みをこらえる木暮。
彩「そ、そうみたい…でも、悪い気はしないわね」
頬をほんのり赤らめながら、彩子が小さく笑った。
木「良かったじゃないか赤木。またいい子が増えて」
優しく声を落とす副キャプテンに、赤木は腕を組んだままぷいと横を向く。
赤「…手のかかるやつが増えただけだ」
口ではそう言いながら――
その表情は、誰よりも微かに綻んでいた。