第7章 インターハイ予選までの1週間
「そっか…そうだよね…花道はそんなことで態度を変えるような人じゃない。私、告白してみる。花道に。予選前に、花道に告白する!」
そう言い切った瞬間、の声にはさっきまでの迷いが嘘のように消えていた。
胸の奥に重く溜まっていた不安が、少しずつほどけていくのを自分でも感じる。
は大きく息を吸い、吐いた。
泣いた後の目はまだ赤いが、視線は前を向いていた。
は、元気を取り戻していた。
洋「おう、頑張れよ」
短く、けれど力強い言葉。
それだけで十分だった。
「ありがとう、洋平」
水戸は何も言わず、ただ静かに微笑んだ。
の決意を、否定も過剰な励ましもせず、まっすぐ受け止める笑みだった。
「洋平はいつも私のこと助けてくれるね。…洋平みたいな人を好きになれたら、きっとこんな思い、しなくて済んだんだろうな」
ぽつりとこぼれた本音。
冗談めかしているようで、その実、深いところを突く言葉だった。
洋「…」
一瞬、水戸の表情が止まる。
は少しだけ目を伏せ、悲しそうに笑った。
自分でも残酷なことを言っていると分かっていながら、それでも正直な気持ちだった。
次の瞬間――
水戸は迷いなくを抱きしめた。
「洋平…?」
突然のことに、驚いて名前を呼ぶ。
洋「なら…なら俺のこと好きになればいいじゃねぇか」
低く、けれど真剣な声だった。
「え…?」
思考が追いつかず、ただ目を見開く。
水戸はと正面から視線を合わせた。
逃げも誤魔化しもない、まっすぐな目。
洋「つらい思いさせたり、泣かせたりしない。お前が好きだ。」
は目をパチクリとさせたまま、言葉を失う。