第7章 インターハイ予選までの1週間
洋「どうした?花道となんかあったか?」
聞き慣れた声に、反射的に顔を上げる。
「洋平…ぐすっ…ううん、何もないよ」
涙を拭い、必死に作った笑顔は、きっとひどく歪んでいた。
洋「そうか」
水戸はそれ以上踏み込まず、の隣手摺に背中を預けた。
風が吹き抜け、二人の間に沈黙が落ちる。
洋「泣いて屋上行くの見えたからよ」
「…」
何も言えない。
けれど、水戸は急かさなかった。
洋「大丈夫か?」
「洋平」
洋「ん?」
「花道が、私に振り向いてくれることなんてあるのかな…」
ぽつり、と零れた言葉。
自分でも驚くほど弱々しい声だった。
洋「んー…わかんねぇな。だってはまだちゃんと告白したことないだろ?」
「えっ…」
思わず顔を上げる。
洋「周りから見たらお前が花道を好きなのはすぐ分かる。お前がやってきたことが全て花道のためなのも知ってる。でも花道は鈍感だからちゃんと言わないと気づかないと思うぜ」
胸を突かれるような言葉だった。
でも、不思議と否定できなかった。
「そっか…たしかに。花道はちゃんと言われないときっと分からないよね…でももし告白して断られちゃったら??今までみたいにそばには居られないかもしれない…」
声が揺れる。
それは、が一番恐れていることだった。
洋「そりゃ今は晴子ちゃんのことが好きだから断るだろうさ。でもお前が自分のことを好いてるって分かったら、見る目が変わるかもしれないぜ?」
「うん…」
洋「だが、考えてみろよ。花道はそんなんで態度が変わるようなやつか?花道はそんな冷たいやつか?」
その問いかけに、の胸がはっとする。
「あ…」
思い浮かぶのは、不器用で真っ直ぐで、誰よりも優しい赤い背中。
洋「違うだろ?だからまずはお前の気持ちを伝えてみたらいいんじゃねぇのか?」
風が、少しだけ暖かくなった気がした。
は少し俯きながら、ゆっくりと息を整える。