第3章 バスケ部入部
そしてその日の夜。
約束の21時、と花道は校門前で落ち合い、人気のなくなった学校へと向かった。
体育館の扉をそっと開けると、広く静まり返った空間に二人の足音だけが響く。
花「はボールだ!俺は床をやる!」
「はい!親分の言う通りにします!」
額の前でビシッと敬礼するに、花道は満足げにうなずいた。
花「よし!では仕事開始!」
「はい!」
決意の声が体育館にぱーんと響く。
それからの数時間、二人は黙々と作業を続けた。
花道は雑巾を片手に大きな背中を汗で光らせ、はボール一つひとつを丁寧に磨き上げる。
ときどき目が合うと笑い合い、そのたびに疲れが吹き飛んだ。
やがて気づけば深夜を過ぎ…
時計の針が朝へ近づく頃、二人はいつの間にか眠りこけてしまっていた。
花「ぐぅぅーがぁぁー」
「スゥ…スゥ…んー…むにゃむにゃ…ん!?」
ふと目を覚ましたは、自分が花道のすぐ隣――
鼻が触れそうなほどの至近距離で眠っていたことに気づき、目を大きく見開いた。
花道はいつものように豪快な大の字で眠っており、
その腕が自然との頭の下に回り、まるで腕枕のようになっていた。
(こ、これ見られたらやば!で、でもこのままでいたい〜…ぐぬぬ…)
揺れる乙女心を抑えるように、そっと時計を見る。
「今何時…6時……!!ダメだ…花道が1人でやったと思われないと意味がない!じゃああとでね花道!」
名残惜しさを噛み締めながら、はそっと花道から離れ、足音を殺して体育館を出ていった。
***
しばらくして、朝の気配が差し込み始める頃──
体育館へ赤木が入ってきた。
赤「こいつ…1人で全部やったのか…」
腕組みしたまま見渡したその視線には、驚きとわずかな感心が混じっていた。
そして――
赤木は静かに決意する。
花道を、バスケ部へ入れることを。