第7章 インターハイ予選までの1週間
「ぐすっ」
昼休みの屋上へ向かう廊下。
涙を拭いながら歩いていたは、前をよく見ていなかった。
ドンッ
三「いてっ…」
「すみません…ぐすっ…」
俯いたまま、謝って通り過ぎようとする。
三「!?」
その声に、三井は思わず振り返った。
三「お、おい!」
だが、の耳には届かない。
そのまま足早に去っていってしまった。
三(なんだ?あいつ今泣いてなかったか?)
胸に小さな引っかかりを残したまま、三井は立ち尽くす。
三(一体何があったんだ…)
は、重たい足取りで屋上へと向かった。
「ぐすっ…ぐすっ…はぁ…」
誰もいないはずの屋上に出た瞬間、張りつめていた糸が切れたように、肩の力が抜けていく。
寄りかかって手摺に置いた手に冷たい感触が伝わっても、もうどうでもよかった。
(流川は"私"と1on1したいって思ってくれてるのかと思ってたのにな…)
視界が滲む。
その時間は、にとって特別だった。
あのバッシュの一件を境に、花道への想いは少しずつ形を変えていた。
"好き"という気持ちは消えなかった。
けれど、報われないと分かっている想いを抱え続けることが、日を追うごとに苦しくなっていったのだ。
それと同時に、流川との1on1の時間は――
花道のことを考えなくて済む時間だった。
流川が自分だけを見てくれていると感じられる、ほんの短い“逃げ場”だった。
だからこそ。
(私じゃなくて……“お父さんの娘”だから、だったんだ)
流川が自分とプレーしたがっていた理由。
それが“天羽ヒロシの娘”であることだと分かった瞬間、胸の奥がひどく冷えた。
さらに重なる、インターハイ予選のプレッシャー。
休む間もなく続く1on1で削られていく体力と精神。
は、もう限界だった。
「ぐすっ…ぐすっ…」
その時だった。
ガチャッ。
屋上の扉が開く音に、はびくりと肩を揺らす。