第7章 インターハイ予選までの1週間
流「…」
流川は、言葉を失った。
反論しようとしても、適切な言葉が見つからない。
否定したい気持ちはあるのに、うまく形にできなかった。
「ごめん、流川。やっぱりインターハイ終わるまでは1on1やめよう」
そう言い残し、は立ち上がる。
その背中は、これ以上引き留めてほしくないと告げているようだった。
だが――
一歩踏み出した瞬間、その手首を掴まれる。
流「気を悪くしたなら…」
低い声。
けれど、掴む力は意外なほど強かった。
「ごめん、離して」
流「離さない」
短く、きっぱりと言い切る。
「もう限界なの!」
堪えていたものが、一気に溢れ出した。
流「…」
流川の眉が静かに寄る。
「予選が近づいてくるプレッシャーと、時間の無さと、三井さんとの1on1と、流川の1on1と…もう体力的にも精神的にも結構来てるの…」
声は震えていたが、言葉ははっきりしていた。
弱音を吐くことを、自分に許した瞬間だった。
流「…」
「選手として出る流川の方がもちろん大変だと思う。それなのにマネージャーの私がこんなんでごめん。でもちょっと…キツイよ…」
最後は、ほとんど掠れた声だった。
は小さく「ごめん」と付け加えると、流川の手を振り払った。
そのまま振り返らず、体育館を出ていく。
流川は、何も言えなかった。
ただ、扉の向こうへ消えていく背中を、黙って見つめていることしかできなかった。