第6章 リョータ・三井復帰
「だから私がさっき花道と帰るのも断ってこの練習をしてるのも…」
はそう言いながら、ボールを軽く弾ませる。
無駄のないフォームで放たれたシュートは、綺麗な音を立ててリングを通った。
「花道の喜ぶ顔が見たいから」
ゴールを見届けてから、三井の方を振り向く。
「全国への切符を掴んで、制覇して、花道に喜んでもらいたいから。だから私も必死なんです」
三井は、少し視線を落としたまま、ぽつりと呟いた。
三(優しいのかそうじゃないのか分からんやつだったが…そうか…全部桜木のためだったのか…)
三「昨日泣いて俺に怒ったのも、俺をバスケ部に入れて強くしたいからだったんだな。ようやく合点がいった」
「あ、それは違いますよ」
三「ん…?」
「それは花道関係ないです」
きっぱりとした否定だった。
迷いも、言い訳もない声。
三「ならなんで俺にあんな風に怒ったんだ?」
は一瞬だけ視線を落とし、すぐに三井を見た。
「好きなものを好きって言えないのは、諦めなきゃいけないのはすごく辛いし難しいって、分かるから」
三「あ…」
は一瞬だけ視線を落とし、すぐに三井を見た。
「だからそんなのやめてほしくて、怒りました」
そう言って、はもう一度ボールを放った。
綺麗な放物線を描いたシュートが、ネットを揺らす。
三「…なんで分かるんだよ。お前はやってもねーのに運動もできるし、桜木のことも好きって声に出して諦めたりしてねーじゃねーか」
苛立ちとも羨望ともつかない声音。
「そうですねぇ…」
はボールを二、三度、軽くドリブルした。
「花道、好きな子がいるんです。ゴリ先輩の妹。晴子ちゃんのことが好きなんです。花道がバスケを始めたのも、晴子ちゃんに言われたから」
淡々とした口調。
だが、その言葉の一つ一つは、胸を削るように重い。
はそのままシュートを放った。
三「それお前は嫌じゃねぇのか?」