第3章 バスケ部入部
洋「まじか!」
「きゃー!花道かっこいいー!さすが!!」
花「おお!」
花道は誇らしげに胸を張り、の声援に軽く手を挙げて返事をすると――
次の瞬間には、一直線に晴子の方へ駆けていった。
花「あ、晴子さん!今の見ましたか!?」
嬉しそうに弾む声。
の方には、もう花道の視線は向けられない。
その背中を見ながら、は小さく息を吐きつつ洋平に声をかけた。
「洋平、あの子、晴子ちゃんが花道の好きな人だよね」
洋「あ、あぁ…」
「可愛い子だよね」
その言葉に、洋平の眉がわずかに寄る。
洋「そんな落ち込むなよ」
「落ち込む?私が?」
洋「あぁ」
「何言ってんだか。ぜーんぜん落ち込んでないよ!慣れてる慣れてる。それに可愛い子で良かった!私はまだまだ諦めない!体当たりするのみ!ハハハハ!」
明るく笑い飛ばすように言うと、はひらりと手を振って教室へ戻っていった。
その背中はいつもと同じテンポで軽やかに揺れている――ように見えた。
洋「本当はちょっときてるくせに…ねぇ、は教室でどんな感じ?」
洋平は残されたの友達に尋ねたが、返ってきたのは
「いつもと変わらないよ」
という答えだけだった。
だがそれは、彼女が周囲を心配させないために“いつも通り”を貫いているだけなのだと、洋平は薄々感じていた。
***
( そうだよ、もう51回目だよ?慣れてる慣れてる…それに私が1番花道のこと好きなんだから。幸せにできるんだから。大丈夫。大丈夫。…でも晴子ちゃん可愛んだよな…大丈夫…だよね…)
賑やかな体育館とは裏腹に、の胸の内は小さく揺れていた。
“見慣れた光景”のはずなのに、今日だけは胸の奥がきゅっと縮む。
「ダメダメ!こんなネガティヴな考え私には似合わない!花道に見合うように私も元気でいなくちゃ!よーし、私も放課後申し込みに行くぞー!!」
自分に言い聞かせるように、ぱんっと頬を叩き、威勢よく歩き始める。
その瞳はまたいつもの強くてまっすぐな光を取り戻していた。