第9章 揺らぎ
「ぐすっ…数回しか会ってないのに…?」
仙「うん。数回で、君がいい子だと分かった。好きになった。これから会う回数が増える度、きっともっと好きになる」
「ひっく…」
仙「今は桜木のことを好きなままでいい。返事も急かさない」
「ひっく…」
仙「そしていつか、俺のことだけ見てくれるようになってくれればいいから。だから俺のことも、好きになろうとしてみてよ。大切にするから。泣かせないから。」
仙道はを抱きしめる腕に力を込めた。
「ううっ…ぐすっ…ひっく…うわぁーん!」
も仙道の背に手を回した。
は嬉しかった。
何もないと思っていた自分を好きと言ってくれたことが。
そして、そんな自分を力強く抱きしめてくれる腕に縋りたくなった。
仙「うん、たくさん泣いていいんだ」
仙道は子供をあやすように、自分の胸よりも下にあるの頭をスリスリ、ポンポンと撫でた。
「うわぁーん!」
は仙道の腕で泣きじゃくった。
一通りが泣き尽くしたのを確認すると、ようやく仙道は腕を解いた。
仙「落ち着いた?」
はコクコク頷いた。
仙「ベンチ掃除しに行くの?スタッフの人がやってはくれると思うけど…」
「試合させてもらったし、お世話になったからします…」
仙(ほら、やっぱり君はいい子だ)
仙「そうか」
「…じゃあ掃除してきます」
仙「俺も手伝うよ」
そう言って仙道はについてきた。
「いやでも仙道さんは使ってないですし…」
仙「好きな子と一緒にいたいからね」
仙道はニコニコとそう言った。
「ありがとうございます…」
は目をパチパチさせると、恥ずかしそうにお礼を言った。
2人は掃除を始めようとした。
仙「俺は何すればいい?」
「え?」
仙「あ、いやぁ、ほら俺は選手だから、あんま掃除とかはしたことなくて。マネージャーに任せっきりだからな」
「あぁ、じゃあそこ掃くのお願いしてもいいですか?」
仙「りょーかい」
2人はようやく掃除を開始した。