第9章 揺らぎ
木「おい、流川…!!」
をすぐに追いかけた人物、それは流川だった。
彩「心配なのね…桜木花道ったら、に八つ当たりして!」
花道は彩子にハリセンで思い切り叩かれた。
はトイレに向かった。
流「おい」
流川はの手を掴んだ。
は一度深呼吸すると流川の方を向いた。
「なに?」
は貼り付けたような笑みを浮かべていた。
流「…」
「トイレ行きたいから手を…」
ギュッ…
流川はを抱きしめた。
「なに…」
流「あんな奴の言葉気にすんな」
「…」
流「お前は十分役に立ってる。お前がいるから、いつも俺たちは自分を取り戻せる。自分たちのプレーができる。それはお前のバスケ部への想いと、確かな知識があるからだ。お前が今までしてきたことに、無駄なんて何一つない。」
「ぐすっ…ぐすっ…」
今まで我慢していた涙がとめどなく溢れてきた。
流川は自分の胸より少し低い位置にあるの頭をポンポンと撫でた。
流「…そんなに傷つくなら、泣くようになるなら、あんなドアホウのこと好きでいるの、もうやめろよ」
「うぅっ…ひっく…」
流「ムカつくんだよ。お前を傷つけるあいつにも、あいつなんかのために泣くお前を見るのも。だから…」
流川は少し言いづらそうに、しかし真剣な顔で言った。
流「だから俺のこと好きになれよ」
「ひっく…ぐすっ…」
流川は少しを離すと、肩に手を置いたまま、今度は顔を見て言った。
流「お前が好きだ。」
流川が初めて、の名前を呼んだ瞬間だった。
「ぐすっ…最初は嫌いって言ってたのに…?」
流「うん」
「ひっく…私どあほうなのに…?」
流「うん」
「ううっ…ぐすっ…ひっく…うわぁーん!」
は素直に嬉しかった。
何もないと思った自分を、好きと言ってくれたことが、素直に嬉しかった。