第6章 リョータ・三井復帰
三井の目がギラリと光り、無言のままへ拳を振り上げる。
だが、その拳が触れるより早く――
は身体をひねり、軌道を外し、すれ違いざまに鋭い蹴りを叩き込んだ。
三「うぉっ…てめぇ…このアマ…」
「言ったでしょ。なめないでって」
その小柄な体に宿る覚悟と怒りに、晴子は息をのむ。
晴「ちゃん…あ、流川くん!」
背後からやってきた流川が、を守るように前へ出た。
流「弱いやつに手出すな。許さん」
その声音は低く、怒りを押し殺している。
流川は自分の後ろにを下げた。
晴「流川くん…」
三「あぁ?」
挑発するように三井がにじり寄る。
その背後で――
竜が折れたモップの金属部分を拾い上げ、無音で流川へ迫る。
がそれに気づき、名を呼ぼうとした。
「るか…んぐっ!」
だがその声は最後まで届かない。
別の男に後ろから腕をつかまれ、また別の男に腹を一撃殴られ、息が漏れた。
「うぐっ…ううっ…」
流「はっ!」
その声に振り向こうとした瞬間――
竜の振り下ろした金属が、流川の側頭部を直撃した。
鮮血が飛び散り、流川の身体が大きく揺れる。
さらに、二撃目。
そして鳩尾へ連打。
晴「ああっ!!」
晴子の叫びが体育館に響く。
三「ふんっ」
流れた血が床に滴る音だけが、やけに大きく聞こえた。
「くっ…」
押さえつけられながら見つめる彼女の瞳には、怒りと恐怖が入り混じって揺れていた。