第6章 リョータ・三井復帰
体育館に入ると、宮城の動きは一変した。
軽快で、速く、鋭く、まるで風そのもの。
安田がボールを持つたびに、
宮城は一瞬で間合いに入り込み、まるでボールが吸い寄せられるように奪っていく。
(すごい…ヤスさんのガードなんてものともしてない…調べたはずなのに…あの人のことは知らない…)
胸の奥がぞくりと震えた。
神奈川のバスケを徹底的に研究したはずの自分が知らない存在。
“未知の強さ”を見せつけられた衝撃だった。
「彩子さん」
彩「ん?」
「あのリョータって人のこと、教えてくれませんか?自分で言うのもなんですけど、めちゃくちゃバスケのこと、特に神奈川のバスケのこと、勉強してきたつもりです。中学のことも高校のことも。それでもあの人の名前も顔も見たことがない。どんな選手なんです?」
思わず前のめりになるほど真剣な表情。
彩子は少しだけ目を丸くしてから、優しく微笑み、
宮城リョータという男のすべて――
彼の過去、彼の強さ、彼の性格。
知る限りの情報を丁寧に語り始めた。
彩子の説明を聞き終えたは、小さく息を呑んだ。
宮城リョータという存在は、まるで“空白の穴”のように情報がなかったため、彼女にとっては完全な盲点だった。
「なるほど…だから分からなかったんですね」
宮城が中学でどんなプレイヤーだったか、バスケへの情熱、そして“次期キャプテン”と噂されるほどの実力者であると知り、花道はその瞬間から燃え上がった。
花「へっ…次期キャプテンだぁ?上等だコラ!」
その勢いのまま花道は宮城へ挑み、宮城も挑発を受けて立ち、
“勝負”は急速にヒートアップしていった。
だが——
……それはすでにバスケではなかった。
パスもドリブルも完全にどこかへ飛び、
取っ組み合い、押し倒し、投げ飛ばし……
もはやロープのないプロレスリング。
体育館に轟く怒号。
赤「やめんか!!!」
赤木の拳骨は、二人の頭に同時に落ちた。
鈍い音が体育館に響き渡り、花道と宮城はその場で悶絶する。
そんな騒ぎの中で、この日の練習はなんとか終わった。