第5章 陵南戦
流(そんな顔するならあんなドアホウのこと好きでいるのやめろよ。…って言ってもこいつはやめねぇんだろうな)
流川は、の落ち込みきって、それでも小さく笑う横顔を見つめながら、
胸の奥にふっと沈むような苛立ちと諦めの混じったため息を、心の中でそっと吐いた。
それでも目は、優しさを隠しきれていなかった。
流「…ならこれが初めてお前から俺が貰ったプレゼントってことで」
「え…?」
信じられない、とでも言うようにぱちぱちと瞬く。
さっきまで泣きそうだった瞳が、驚きで大きく開かれる。
そんな彼女の様子を横目で確認しながら、
流川はふっと視線をそらし、いつものクールな調子に戻った。
流「部活遅刻すんなよな。やる気無くす」
ぽすっと軽い音を立てて、彼はの頭に手を置いた。
ほんの一瞬だったが、その手つきはあまりにも優しくて、
の胸の奥がきゅっと鳴る。
そのまま荷物を拾い上げて歩き出す流川。
背筋はいつもより少しだけ軽い。
「流川…」
は、出ていく教室のドアをしばらく呆然と見つめていた。
けれど、すぐにハッと息を飲み、慌てて荷物を肩にかける。
「わ、私も行く!!」
慌ただしくカバンを抱えて後を追う。
その動きは、さっきまで泣きそうだった人間とは思えないくらい、どこか気持ちが晴れていた。