第5章 陵南戦
そのころは——
俯いたまま、ゆっくりとした足取りで教室へ戻ってきた。
机の間を歩く影はひどく小さく、
いつもの元気さとはまるで別人のようだった。
ロッカーの扉を開けると、
そこには丁寧にラッピングされたプレゼントが置かれている。
震える指でそれを取り出し、
ぎゅっと胸の前へ抱きしめた。
「…こんなの要らないよね…」
小さくつぶやく声は、泣き出しそうにかすれている。
それは昨日、花道のためにこっそり選んで買ったバッシュだった。
彼の喜ぶ顔を想像しながら何度も悩んで選んだ——
その気持ちごと、胸の中で崩れ始じていた。
涙をこらえながら向かったのは、
流川の席のすぐ後ろに置かれたゴミ箱。
捨てようとして腕を伸ばすたびに、
手の震えが強くなっていく。
何度やっても、どうしても力が入らない。
ぽたり、と涙がこぼれ落ちた。
その時だった。
流「…あいつへのプレゼントか」
教室に残っていたのは、と流川だけだった。
その声に、は驚いて顔を上げることもできず、
ただ小さく肩を震わせる。
「うん…結構高かったんだけどな…好きな人と一緒に選んだ方履くに決まってるよね…ぐすっ…」
握った包装紙が、悲しみに合わせてしわくちゃになっていく。
次の瞬間――
ギュッ…