第5章 陵南戦
仙「フッ、あの子の中では俺は負けてるのか…そうなると俄然勝利が欲しくなるな」
彼の横で、彦一がの後姿に目を奪われながら呟く。
彦「あの湘北のマネージャーさん、えらいかわええ人ですなー。桜木さんの彼女さんとかなんかな?」
仙「いや、違う」
彦「ちゃいますのん!?あんなええ感じやったのに…」
仙「桜木の好きな子は別の子だ」
彦「かーっ、桜木さん罪な男や!!」
仙「そういえば彼女の名前はたしか…」
彦「えっと…天羽さんですね」
彦一は話しながら自分のノートをめくり、その名前を指で追う。
仙「天羽…」
仙道の瞳がかすかに揺れた。
仙(どっかで聞いたことあるような…はっ…!!まさか彼女は…)
仙道は記憶を手繰り寄せた。
思考の途中で彦一が覗き込んでくる。
彦「どうかしはりましたか?仙道さん」
仙「あぁ、いや、なんでもない。さぁ、俺たちも帰ろうか」
仙(次会ったら聞いて確かめてみよう)
それは、理由をつけてでもまた会いたいという感情に近かった。
仙道は胸の奥に灯った小さな火を押し隠すように、静かに歩き出した。