第5章 陵南戦
「うん、あ、そういえば一年生?私タメ口使っちゃってるけど」
声をかけられた彦一は、まるで時間が止まったみたいに固まった。
彦「わ、わいは…」
そこへ横から、仙道がすっと入ってくる。
いつもは人の会話に割って入るようなタイプではない彼が、なぜか当然のように言葉を引き取った。
仙「彼は一年生だよ」
彦(仙道さん…いつも穏やかで人の話に割り込んでくるような人じゃあらへんのに…あ!も、もしかしてもしかして…要チェックや!!)
動揺しきりの彦一をよそに、は「あ…」と小さく目を瞬かせた。
仙「どうだった?俺のプレーもカッコよかっただろ?」
仙道はそうだろ?とでも言うように、身を乗り出してくる。
「なっ…」
距離が近い――というか近すぎる。
太陽みたいな笑みを浮かべながら、彼は真っ直ぐの瞳を覗き込む。
仙「ん?」
仙道は“当然誉められる”という顔でさらに腰を折り、との距離を縮めた。
花「お、おい仙道!お前距離が…」
花道が慌てて仙道を押し退けようと踏み出すが、それより早く、がきっぱりと言い放つ。
「…こんなこと言いたくないけど…認めたくないけど…凄かったです…」
その瞬間、仙道の表情が止まった。
普段の彼からは想像できない、“ぽかん”という顔。
があっさり認めるとは思っていなかったのだろう。
意外すぎて、目を丸くしたまま動けなくなっている。
だが、次の言葉はさらに強烈だった。
「でもカッコいいのは花道です!帰ろ!花道!」
花「お、おう!」
ためらいなど一切なく、は花道の手を掴んで歩き出す。
花道は誇らしげに何度も振り返っては仙道にあっかんべーしてみせた。
ぽつんと取り残された仙道は、ふっと口元を緩めた。