第5章 陵南戦
は、転んで座り込んだまま動けずにいる花道のそばへ、破れた体育館シューズを抱えたまま駆け寄った。
彼の背中は震え、ただ床だけを見つめていた。
そっと彼の前にしゃがみ込み、シューズを差し出しながら、静かに口を開いた。
「よく頑張ったよ、花道…入学するときに買った靴がこんなボロボロになるまで…頑張った証拠だよ…悔しいのだって…頑張った証拠だよ…。花道…」
声は震えていた。
涙がぽたぽたと床に落ちていく。
それでも彼女は、揺れる手で花道の肩にそっと触れる。
花「…」
花道は顔を上げられない。
けれど、肩に置かれたその手の温かさだけは、はっきり伝わっていた。
「カッコよかったよ。今まで見てきた中で、花道1番かっこよかったよ」
花「あ…」
その言葉が届いた瞬間、花道の胸に何かがふっと灯った。
ゴールを奪い返して油断して負けたのは事実。
悔しくて、情けなくて、自分を“カッコ悪い”と思っていた。
──でも。
“1番かっこよかった”と言われたことで、
その苦しみがほんの少しだけ軽くなった。
赤「…整列だ、桜木」
けじめのように体育館に頭突きをすると、ふらりと立ち上がり、花道はようやく試合結果を受け止め、列へ戻っていく。
挨拶を終え、控室で着替えたあと、全員で陵南に挨拶をすることになった。