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何も知らない僕たちは

第14章 14


カヲルはそこの辺りで拾った棒切れで橋渡しをしてあげた。蟻は無事に地に足を付くことができたようだ


「……」(ムフーッ

彼女の満足気な顔を見る人はここにはどこにもいない。
蟻は自分の生き写しのようで皮肉の象徴だと思っていたが、だからこそ共感する部分もあるのだ



周りの世界に夢中になっているといつの間にか日も落ちている。最近は彼の帰りが遅い。今日は出かけてくると言っていたがどこに行ったのだろう…でも彼が戦えるのなら生きて帰ってくるだろう
僅かな心配をしながら夕食を作ろうと帰路に付いた時だった



背中に視線を感じた。振り向くと着物を着た男が立っていた。



「やれやれ、奴の本拠地に種をまこうと思って来てみれば、


死に損ないの小娘がいるじゃないか」


勿論カヲルには何を言っているのか聞こえない。だが、”分からない”が、本能的な”恐怖”に変わっていた。

「憐れな。こんな若い歳で亡くなったことも、生霊になっていることも。
君という存在はもうこの世界にはいらないんだ。ひと思いに一発で終わらせてやろう。早く成仏しなさい」

そう言って男はお札を取り出した。

「ッ…」
カヲルは必死で足を動かすが大の大人に適うはずがない


「無駄な悪あがきだ」

「ああああっ!」
背中から貼り付けられるとジュウと音を立ててカヲルの身体を蒸発させる。助けてと言えない彼女はその痛みに呻き声を上げるだけだった


消される…本当に…


まるでパソコンからデータを消去するようにカヲルという存在ごと消えていく。




嫌だ。嫌だ。私はまだ……


「…!?」

生きていたいと思っているのに……ここにいる意味が全く思い出せない。


私はどうしてあの時死ぬことができなかったのか、自分でも分からなかった。自分で見いだせないことを他人に探してもらおうなんて無理な話。なら、強制的に消してもらう方がきっと一番楽なんだ


<シャットダウン中  電源ボタンに触らないで下さい>














「駄目だよ、カヲルちゃん」

瞼を開くと彼がいた。


「自分の弱さに、負けちゃ駄目だ」

ああ、助けに来てくれたのか…



「鬼太郎、もう大丈夫じゃ」
背中を見るとちょこんと親父さんが乗っている。いつの間にか引っ付いて離れないお札は消えていた
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