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何も知らない僕たちは

第12章 12


「大丈夫か!?」

「…き、鬼太郎か?た、助かったのら」

つい先ほど顔見知りの妖怪が暴走しているとの声を聞きつけてここまで飛んできた。普段はおとなしいのだがその力は想像以上にすさまじく、守りに徹し、なかなか応戦することが
できなかった。
そのうちにフッと力が抜けたように倒れ込んだ

「何があったんだ?」

「わかんない、けど散歩してたらいきなり目の前が真っ暗になって…決して僕の意志なんかじゃ…!」

「信頼してるから分かってるよ。もしその言葉に嘘がなければ誰かに操られた可能性が高い」

何か手掛かりがないか身元を探してみると背中に何かお札のようなものが貼られていた。もう粘着力はなく、それははらりと落ちて自然と燃えて消えてしまった

「ああ…消えちゃった…」

「鬼太郎何か分かったか?」

「一瞬だけでしたけど、お札にダイウイキョウの印が見えました」

「だいういきょー…?」

「実の形が星に似ていることから別名スターアニスとも呼ばれておる。お香や香辛料、薬として使われている植物じゃ」

「はっきり分かったことはこれは人為的であるということと、おそらく主犯は人間であるということ。
しかし何故人間があえて妖怪を狂暴化するようなことをしたのか…」

「目的は見えずじまいじゃの。ぶり返しに大きく関わっているだろうに。
ひとまず今日のところは帰るとするかの。鬼太郎、途中まで送ってやれ」

「はい父さん」






「わあ…!なんだかカレーみたいな匂いがするのら!」

「確かダイウイキョウも使われていたのぉ。あのお札の印は間違いなさそうじゃな」

鬼太郎はおそらくお札からしたであろうダイウイキョウの甘くもスパイシーな香りに酔いしれながらカヲルのことを思い出していた

困ったことにいくら彼女に未練を聞き出しても分からない、心当たりがないの一点張りだった。でも嘘をついているとは全く思えないし、つく利益も彼女にはない。いよいよ本当に成仏できる兆しがふさがれてきたと頭の片隅でため息をつくも、心のどこかでこれでいいと思っている自分もいる


『結局我儘なんだな…どちらにしろカヲルちゃんとは別れないといけないのに…』

「…ろう…鬼太郎!」

「うえっ!?何!?」

「僕こっちらから。送ってくれてありがとう!」

「あ、うん、いいんだよ」
いけない、ここまで支障が…
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