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何も知らない僕たちは

第1章 1


明け方、少女が草原に横たわっている。

細長い葉には霧で結露した朝露が真珠のように美しく、煌びやかに光を帯びる

しばらくすると、少女は目を覚まし体を起こす。ここがどこなのか分かっていないのかしばらくきょろきょろと辺りを見渡すが手掛かりになるようなものはどこにもない。
立ち上がると着ていたカーディガンに付着した露がぽろぽろと地面に落ちていった。今まで自分が地面で寝ていたことにそこで気が付いた彼女は腕やお尻の埃をはたく

草原は、いや森は恐ろしいほどに静かで、

懐かしさがあった。
まるで昔、夏休みに田舎に帰省し虫取りや鬼ごっこをして駆け巡ったような…そんな場所
彼女にはそんな経験はなかったはずなのに、すぐさま頭をよぎったのが”それ”だったことに疑いの念を抱く

ここはどこだろう…
そもそも自分はどうしてここにいるのだろう…
記憶をたどってみてもそれらしいものはない。
そうだ、前に本で森で遭難した時の対処法として山のてっぺんに登れば抜け道がどこにあるのか、民家はあるのかある程度確認することができると書いてあった。
ここにはそれらしき山は見当たらないから長さのある木で我慢しよう
彼女は周辺で一番高そうな木の頂上に登った。最近の子は木登りなんてろくにしないもんだからそこまで来るのに精一杯だった。何度も滑り落ちたし、木の皮で手がボロボロだった

景色を見て彼女は絶望した。
記憶にない場所。手掛かりになる街も、標識も、人影さえもどこにもない。彼女は上空探索は諦めて足で見つけようとした。

どれくらい歩いたのだろう。時計を持っていないから分からないけれど長い時間が過ぎたような気がする。足が「もう歩けない。ここで死ぬんじゃないか」と言っている気がしたから。

ふと顔を上げると。
ぽつんとツリーハウスが建っていた。
彼女は本で読むようなツリーハウスとはちょっと違うと感じる。家を支えている木は細くて今にも折れそうだし、家も古い感じだ。唯一同じという点はそれをはしごが繋いでいることぐらいだった。
日本のツリーハウスはこんな感じなのだろうか?そもそも日本にツリーハウスなんて文化あったのだろうか?

こんな場所でも人が住んでいるのかもしれない…
微かな希望を持たなくては少女はもう精神的にやっていけなかった

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