第71章 懸命
「誰が犯人達を倒しているのかと思ったら……
あなただったんですね、沖矢さん。」
「ええ、まぁ。
美緒さんとは偶然ここで会っただけですので
変な誤解はしないで下さいね?」
…ちょっと秀一くん……!
いい加減仲良くしてほしいんだから
そんな挑発するような言い方しないでよ!
『昴さんも…ありがとうね。
一緒にいてくれて心強かったよ。』
「お礼なんていりませんよ。
後の事は私に任せて、あなた達は早く病院に行って下さい。」
零くんは何も言わずに私を支えながら秀一くんのそばを通り過ぎたが、急に足を止めて振り返り、秀一くんを見ていた。
「僕が来るまでの間…
美緒を守ってくれた事には礼を言っておいてやる。」
…素直じゃないなぁ、本当に。
でもなんだか零くんらしく笑ってしまった。
私達は再び歩き出して、零くんは懐からスマホを取り出し
銀行の裏口に車を回す様に風見さんへ頼んでいた。
裏口には急な停電で駆けつけた多くの警察官がいて
零くんが簡単に説明すると
銀行の中へぞろぞろと入って行き犯人達を確保しに行った。
人がいなくなったタイミングで風見さんの車がやってきて
私は零くんと共に後部座席へ乗り込み
行き先を風見さんに伝えて、車は病院に向かって走り出した。
「美緒…」
零くんは痛がる私を不安そうな目で見つめていたので
私は零くんの手をギュッと握った。
『は…ぁ……大丈夫…。私…頑張るからね…?』
「…ふっ、お前は強い女だもんな。」
『そうそう。こんなの…余裕だよ?』
笑顔でそう伝えると
零くんの顔から少し力が抜けた様に見えた。
陣痛が一旦落ち着いたところで私は息を整え
再び零くんの目を見つめた。