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《降谷夢》bonheur {R15}

第71章 懸命




暗闇になった瞬間、
隣に座っていた秀一くんが立ち上がる音がして
私のそばに立っていた男を倒す音が聞こえた。

停電するのが分かっていたし
事前に目を瞑って暗闇に目を慣らしていたから犯人の立ち位置が分かったんだろう。


「おい!なんだよ停電か!?」
「くそっ!何も見えねぇ!」
「どうなってんだよ!!」


他の犯人達が騒ぎ立てる中、どこかの扉が開く音がして
誰かが外から入ってきたのか足音がこちらの方に近づいて来た。


そして…


「うっ!」
「ぐは…っ」
「うわ…っ!」


犯人達の騒ぎ声がうめき声に変わり
ドサっと人が倒れた音が聞こえたと思ったら、私の体は暖かい温もりに包まれた。





「美緒…遅くなった。」

『ん…大人しく待ってたよ…?』


やっぱり零くんは助けに来てくれたね…


銀行強盗達は別に怖くなかったが、零くんが来てくれた事に安心して、ホッと胸を撫で下ろした。


「班長。制圧完了だ。電気をつけてくれ。」


恐らく銀行の外にいるであろう伊達くんに無線で知らせると、すぐに銀行内の電気がつき明るくなり、目の前にはSITの服装の零くんが視界に入った。


『来てくれて…ありがとう。』

「お前に何かあったら駆けつけるっていつも言ってるだろ。
何度も言わせるな。」

『あはは…そうだったね、っ、いったぁ…!』


ほっとしたのも束の間、再び陣痛がやってきて
私は襲ってくる痛みに顔を歪めた。


「美緒…!?おい、まさか…」

『う、ん…早いけどもう…出てきたがってるみたいで…』


零くんが驚いていると
ずっと私のそばにいてくれた女性が口を開いた。

「あなたが旦那さんね?
早く彼女を病院に連れて行った方がいいわ。」

不思議そうな目でその女性を見る零くんに
その人が元看護師さんであり、ずっと私を励ましてくれていたことを伝えた。


「妻を見て頂いてありがとうございました。
お礼はまた改めてさせて下さい。」

「お礼なんていらないわ?助けに来てもらったんだもの。
…元気な子、産んでちょうだいね。」

『はい…っ。
本当、に…ありがとうございました…!』


零くんに支えられながら立ち上がると、
犯人達を拘束し終わった秀一くんが近づいて来た。








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